パーキンソン病センター

パーキンソン病と鑑別が必要な疾患(二次性パーキンソニズム)

 パーキンソニズムとは,パーキンソン病の運動症候の総称です。パーキンソニズムはパーキンソン病以外の疾患でも認められることがあります。二次性パーキンソニズムとは、このパーキンソン病とは違う疾患でみられるパーキンソニズムを指し、パーキンソン病と診断するためにはこれらの疾患を除外する必要があります。以下にパーキンソン病と鑑別をする必要がある主な疾患をあげます。

進行性核上性麻痺

 姿勢保持障害と体の中心に近い部位における強い固縮、眼球運動障害,認知症が特徴です。パーキンソン病では進行期になって転倒が目立ってくることが多いため、発症初期から転倒を繰り返すパーキンソニズムでは、この疾患を疑う必要があります。

大脳皮質基底核変性症

 大脳皮質と大脳基底核に主な病変があります。そのため大脳皮質の症状とパーキンソニズムを併せもつのが特徴です。左右差が目立つことが多く、症状のある上肢あるいは下肢の肢位異常が頻繁にみられます。患肢にはミオクローヌスや振戦、舞踏運動がしばしば認められます。大脳皮質症状には、皮質に由来する感覚障害、失行や失語、遂行能力障害や行動・人格障害、視空間認知障害などがあります。

多系統萎縮症

 小脳性の運動失調、パーキンソニズム、自律神経障害いずれかの症状で発症し、主にそれら多系統にわたって症状が出現し、慢性に進行していきます。診断時に小脳運動失調を主体とするか、パーキンソニズムもしくは自律神経障害を主体とするかで、2つの型に分けられます。声門閉鎖によって突然死する可能性があり、いびきの出現や増悪には注意が必要です。

脳血管性パーキンソニズム

 パーキンソン病と比較し、高齢発症で、振戦はめずらしく、左右対称で下半身の症状が強い傾向にあることが多いとされています。他の症候の合併やLドパの治療効果に乏しいことや、画像所見で診断します。運動麻痺や原始反射、認知症が合併した場合、脳血管性パーキンソニズムも疑い、詳しい画像検索を行う必要があります。

薬剤性パーキンソニズム

 固縮が最も多い症状ですが、パーキンソン病の4徴候がそろっていることも多いため、パーキンソン病との鑑別は困難なことがあります。症状改善のためには、原因となる薬剤を中止する必要がありますが、薬の減量や中止は困難なことが多く、対応は慎重にする必要があります。

正常圧水頭症

 歩行障害,認知機能障害、尿失禁が3徴です。歩行障害は必発で、パーキンソン病の歩行障害と類似します。認知機能障害の程度が少ない早期に診断し、治療することで、症状の改善が期待できます。治療はシャント術です。歩行はパーキンソン病の小刻み歩行に加え、両足の間が開いている開脚歩行が加わったものが多く、方向転換が特に苦手になります。画像上で脳室の拡大、すなわち髄腔内の髄液量増多が確認できることもあります。シャント術の効果があるか確認するため、腰椎位から穿刺針を髄腔内へ挿入し、髄液を排除することで、歩行障害や認知症が改善するかを確認する検査(タップテスト)を行います。

レビー小体型認知症

 幻覚など、パーキンソン病に伴う認知機能障害が、パーキンソニズムより前か、パーキンソニズムと同時に発症した場合、レビー小体型認知症と診断されます。病理組織診断はパーキンソン病と同じであり、パーキンソン病の病理が大脳皮質にまで広がったため、認知症として発症します。人や虫、動物の幻視や錯視が多く見られ、幻覚に基づく被害妄想、罪業妄想が問題となることが多いのが特徴です。