
視床下部過誤腫は,視床下部に発生する異常な神経細胞やグリア細胞を含んだ先天性の奇形的病変です.症状は,乳幼児期に発症する「笑い発作」を特徴とするてんかん発作で,ときに強直発作や全身けいれんを伴う場合もあります.てんかん発作は難治性で,発作を繰り返すことにより,しばしば行動障害や認知障害などをきたします。また,ときに性ホルモンの異常分泌により,思春期早発症をきたすこともあります.
視床下部過誤腫のMRI(画像ライブラリ)
視床下部過誤腫に対する手術治療は以下のようなものがあります.
当施設では,1997年から2007年9月現在まで,19名の視床下部過誤腫の患者さんに,定位温熱凝固術を行い,全例で笑い発作の消失,15名でてんかん発作の完全消失,という良好な成績をあげています.1名は現在抗てんかん薬の服薬も中止しています.特に16歳以下の小児の患者さんでは,現時点では完全な発作消失が得られ,多動,易興奮性などの行動異常も改善しています。
定位的腫瘍凝固術は,パーキンソン病などで行われる定位脳手術と同じ方法で行います。手術室で頭部に定位脳手術用フレームをはめMRIを撮影します.MRI上で凝固する場所を決めた後,パーキンソン病などのときと同様に微小電極針をまず入れて,正常視床下部と過誤腫の境界部を確認します(過誤腫に入ると神経細胞の活動を記録できなくなります).その後,凝固用の電極に入れ替えて,血圧,脈拍,体温などを確認しながら凝固を行います.
手術の合併症として,今までみられたものは,1.発熱(38℃以上),2.食欲の異常亢進,3.低ナトリウム血症(SIADH),4.短期記憶障害,5.ホルネル症候群ですが,いずれも一時的なもので1日〜数週間で改善しており,重篤な合併症や後遺症はありませんので,安全性が高い手術であるといえます。