
脳神経外科の手術は1970年頃から手術顕微鏡の導入により著しい進歩を遂げました.さらに最近10年ほどの間に,全身麻酔下でも大切な脳や神経の機能を検査しながら手術を進めるという術中モニタリングの方法が普及しました.脳神経外科手術による後遺症の出現を予防するためには術中モニタリングは必要不可欠なものとなっています.
術中モニタリングの方法にはいろいろなものがあり,手術によって使い分ける必要があります.ここでは顔面けいれんの手術に対する術中モニタリングについて示します.くわしくお知りになりたい方は,
亀山茂樹著「脳神経外科手術のための電気生理モニタリング」
西村書店(東京),1997;ISBN:4-89013-259-7
をご参照ください. 2種類のモニタリングを組み合わせて行います.
顔面神経と隣り合わせに聴神経がありますので,聴力障害を予防するためにBAEPモニタリングを必ず行います.V波潜時の遅延が1.0msecを越えた場合は注意しながら操作を続けますが,V波の振幅が50%低下して来る場合は,小脳の圧排を速やかに解除する必要があります.
| BAPE所見 | 審判 | 対策 |
|---|---|---|
| V波潜時が1.0ms以上延長したとき | 注意 | 圧排の方向を変える |
| V波潜時が1.5ms以上延長したとき | 警告 | 圧排をやめて回復を待つ |
| V波振幅が50%になったとき | 緊急警告 | 同上,圧排の方向を変える |
| V波が消失したとき | 緊急警告 | 同上 |
| V波潜時の延長が停止したとき | 安心 | 圧排の位置方向を変えないで減圧操作を終了する |
下に見えている波形がBAEP 
顔面けいれんの患者では顔面神経の末梢1分枝を電気刺激するとその神経が支配していない顔面筋から異常な筋反応が記録されるのが,確定診断になります.このAMRは全身麻酔下でも100%記録され,微小血管減圧術が成功した場合速やかに消失することが知られています.したがって,手術の成功が術中に確認できることになります.